防犯の未来をひらく数学──地理的プロファイリングとAI活用
同じ夜に異なる局で描かれた「地理的プロファイリング」
2025年7月30日、ちょっと面白い偶然がありました。
テレビ朝日系列の『大追跡:警視庁SSBC強行犯係』(第4話、21時~)と、フジテレビ系列の『最後の鑑定人』(第4話、22時~)。
なんと、この2つのドラマで同じ捜査手法「地理的プロファイリング」が使われていたんです。
別々の局なのに時間差で同じテーマ。これは驚きですよね。視聴者としては「また出てきた!」と思った方も多いのではないでしょうか。
ルーツはアメリカのドラマ『NUMB3RS』
この「地理的プロファイリング」、実はアメリカのドラマで有名になった手法なんです。
2005年から2010年にかけて放送された『NUMB3RS:天才数学者の事件ファイル』。その第1話で、すでに登場していました。
犯人は「近すぎる場所(自宅近辺)」ではリスクを避ける傾向があり、
逆に「遠すぎる場所」でも犯行は難しい。
こうした人間の行動パターンを数式化し、事件発生地点を地図上にプロットして犯人の行動範囲を推定するのが「地理的プロファイリング」です。
「数学で犯人を追い詰める」というコンセプトは衝撃的で、当時の視聴者に強烈なインパクトを残しました。地理的プロファイリングもその象徴的な例のひとつです。
NUMB3RSは、天才数学者の弟とFBI捜査官の兄がタッグを組み、統計学・確率論・数理モデルを駆使して難事件を解決していく物語。単なるフィクションの枠を超え、現実の捜査手法に基づいたエピソードが数多く取り入れられていました。
書籍で知る『数学で犯罪を解決する』
ドラマをきっかけに、「実際にどんな数学が使われているの?」をわかりやすく解説した本があります。
それが『数学で犯罪を解決する』(2008年、ダイヤモンド社/キース・デブリン、ゲーリー・ローデン著/山形浩生、守岡桜訳)。
この本では、NUMB3RSに出てきたシーンをベースに、地理的プロファイリングを含むさまざまな数理手法が、ドラマのあらすじとともにわかりやすく紹介されています。数学に苦手意識のある人でも理解できるよう工夫されていて、「数学ってここまで現実の捜査と結びつくのか!」という驚きを与えてくれます。
そして今はAIの時代
そんな犯罪捜査技術、今ではさらに進化しています。
原著の刊行が2007年の『数学で犯罪を解決する』には、「データマイニング」や「ニューラルネットワーク」という用語はでてくるものの、まだ、「ディープラーニング」は出てきません。
現在では、AI(人工知能)を使って、過去の事件データや地域の特徴を分析し、犯罪が起こりそうな場所や時間を予測。実際に警察で防犯に活用され始めています。
NUMB3RSから始まった「数学×捜査」のアイデアが、AIの力を借りて現実社会の安全に役立つようになっているんです。
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