SuperMapブログ

  「GISって、何の略ですか？」 この質問に、多くの人は「Geographic Information System（地理情報システム）です」と答えるでしょう。教科書にもそう書いてありますし、もちろん間違いではありません。 しかし、今日のGISが持つ役割と可能性を考えると、その「System（システム）」という言葉は、少し窮屈に感じられないでしょうか？ 私自身、長年この業界に携わる中で、時代の変化に合わせてGISの「S」の部分を自分なりに解釈し直してきました。そして今日、AIが社会のOSになろうとしている今、GISの新たな定義を皆さんと一緒に考えてみたいと思います。 黎明期：The "S" as a System（地理情報システム） 私たちがGISと出会った頃、それは間違いなく専門家が使うための高度な「システム」でした。デスクトップPCにインストールされたソフトウェアは、地図データを作成し、空間的な分析を行うための、閉じた一つの体系。この時代、GISの価値はそのシステム自体の中にありました。 Webの時代：The "S" as a Service（地理情報サービス） インターネットが普及すると、GISはデスクトップを飛び出しました。ブラウザ上で誰もが地図を閲覧し、ルートを検索できるWebGISが登場。GISの機能は、所有する「モノ（システム）」から、誰もが利用できる「コト（サービス）」へと変化しました。この頃から、私にとってGISは「地理情報サービス」としての側面を強く持つようになります。 課題解決の時代：The "S" as a Solution（地理情報ソリューション） やがてGISは、単なる地図サービスに留まらなくなります。「どこに新しい店舗を出店すべきか？」「どのインフラを優先的に更新すべきか？」「災害時に最適な避難経路は？」といった、ビジネスや社会が抱える具体的な課題に対する「解決策（ソリューション）」を提供するようになりました。GISは、地図を作るための道具から、意思決定を支援するための強力なソリューションへと進化したのです。 そして現代へ：The "S" as a Software for Geospatial Intelligence そして、2025年の今日。IoTが...

「今日の天気は？」「最速の通勤ルートは？」 この横浜の朝、あなたがスマートフォンで天気予報や地図アプリをチェックしたなら、実はもう「AI」と「GIS（地理情報システム）」の強力な連携が生み出す恩恵を体験しています。 AIとGISは、現代社会を支える二大テクノロジーですが、この二つは単に組み合わさっているだけではありません。お互いの能力を劇的に高め合う、最強のパートナーなのです。 この共生関係は、「AI for GIS」と「GIS for AI」という二つの視点から見ると、未来を予測するヒントが見えてきます。今回は、この最強コンビが私たちの世界をどう変えていくのかを、分かりやすく解説します。 「AI for GIS」とは？ AIが地図づくりを超速・超精密にする話 まず一つ目は、AIを「道具」として使い、GIS（地図）の能力を強化・自動化するアプローチです。 これまで専門家が多くの時間をかけて行っていた地図データの作成や解析を、AIが代行します。まるで、GIS専門家にとっての「超人的なアシスタント」のように機能し、地図づくりを根底から変革します。 具体的な活用例  * 衛星画像の自動解析    AIが衛星写真をスキャンし、新しい建物の数、太陽光パネルの設置状況、森林伐採の範囲などを自動で検出します。人間では見逃してしまうような細かな変化も捉えることができます。  * 災害状況の即時把握    災害発生前後の航空写真をAIが比較し、浸水エリアや建物の倒壊箇所といった被災状況を瞬時に特定。迅速な救助計画の立案に貢献します。  * 未来の状況を予測    過去の気象データと地形データを学習したAIが、「もしこの地域にこれだけの雨が降ったら…」といったシミュレーションを行い、土砂災害の危険エリアなどを高精度で予測します。 このように、「AI for GIS」は、地図の作成を効率化し、その表現力を未来予測の領域まで拡張します。 「GIS for AI」とは？ 地図データがAIを「賢く」する話 二つ目は、GISが持つ地理空間データを「文脈」として使い、AIの予測精度や判断能力を高めるアプローチです。 AIは単独では、膨大なデータを処理できても、それが「現実世界のどこで起きていることなのか」を理解...