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首都直下地震と帰宅困難者問題。都市の高層ビルに求められる新たなレジリエンス

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もし、あなたが仕事中に巨大地震に遭遇したら。交通機関は完全にストップし、周囲の状況も分かりません。首都直下地震では、400万から500万人もの人々が帰宅困難者になると想定されています。むやみに移動を開始すれば、火災や建物倒壊などの二次災害に巻き込まれる危険もあります。 このような事態に備え、都市部の高層・超高層ビルには、今まったく新しい形の総合的な災害サポートシステムが求められています。その目的は、発災直後から安全が確認されるまで、ビル内にいる人々をシームレスに支援することです。 求められる3段階の支援 発災直後:建物の安全性評価 ビルに設置された地震計のデータをリアルタイムで解析し、建物の構造的な安全性を即座に評価。中に留まるべきか、避難すべきかの科学的な判断材料を提供します。 待機支援:情報提供とリソース管理 安全が確認され、ビル内で待機する場合、正確な情報提供が不可欠です。周辺の被害状況、復旧見込み、ビル内の備蓄(食料、水、トイレ)の状況などを提供し、人々の不安を和らげます。また、人流データを活用して施設内の混雑状況を把握し、パニックを防ぎます。 退避支援:安全な屋外への誘導 周辺の安全が確認され、屋外への退避が可能になった際には、安全な避難経路や開設されている避難所の情報をリアルタイムで提供。混乱なく、人々を安全な場所へと誘導します。 この一連のサポートを実現するには、建物内のセンサーデータ、滞在者の人流データ、そして都市全体の被害状況データなどを統合管理する高度なシステムが不可欠です。ただ頑丈なだけでなく、中にいる人々を最後まで守り抜く「しなやかさ」。それが、これからの都市ビルに求められる真のレジリエンスです。

災害時にも医療を止めない。「地域医療継続システム」という挑戦

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大規模な水害が発生した時、地域の病院が機能不全に陥ってしまったら――。考えただけでも恐ろしい事態ですが、これは決して絵空事ではありません。医療機関を守り、災害時にも医療活動を継続させるための先進的な取り組み、それが「地域医療継続システム」の構築です。 このシステムの目的は、科学的根拠に基づいた実効性のある防災計画を立て、災害医療に関わる多様な組織(病院、消防、医師会など)が情報を共有し、円滑に連携できるデジタル基盤を作ることです。 システムの核心は「多様なデータのリアルタイム統合」 このデジタル基盤が目指すのは、個別に管理されている様々なデータを、一つの地図上にリアルタイムで統合することです。 気象データ: 刻々と変わる降雨量や風速。 河川データ: 危険度を示す河川の水位。 タイトル: 災害時にも医療を止めない。「地域医療継続システム」という挑戦 タグ: 事業継続計画, BCP, 災害医療, GIS, リアルタイムデータ 大規模な水害が発生した時、地域の病院が機能不全に陥ってしまったら――。考えただけでも恐ろしい事態ですが、これは決して絵空事ではありません。医療機関を守り、災害時にも医療活動を継続させるための先進的な取り組み、それが「地域医療継続システム」の構築です。 このシステムの目的は、科学的根拠に基づいた実効性のある防災計画を立て、災害医療に関わる多様な組織(病院、消防、医師会など)が情報を共有し、円滑に連携できるデジタル基盤を作ることです。 システムの核心は「多様なデータのリアルタイム統合」 このデジタル基盤が目指すのは、個別に管理されている様々なデータを、一つの地図上にリアルタイムで統合することです。 気象データ: 刻々と変わる降雨量や風速。 河川データ: 危険度を示す河川の水位。 インフラデータ: 通行止めになっている道路の情報。 医療資源データ: 各病院の受け入れ可能患者数や備蓄医薬品の状況。 これらの情報が一元化され、関係者全員が同じ状況認識(Common Operational Picture)を持つことで、初めて組織の壁を越えたスムーズな連携が可能になります。例えば、「A病院は浸水の危険があるため、今のうちに患者をB病院へ移送する」「C病院へ向かう救急車は、冠水しているX道路を避けてYルートを通る」といった的確な判断が、迅速に下せ...

サプライチェーンの「見えないリスク」を可視化する。GISが可能にした次世代BCPとは

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ここ東京のオフィスにいても、遠く離れた地域で発生した災害が、私たちのビジネスに深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、国内外に数千、数万社のサプライヤーを抱える製造業にとって、サプライチェーンの寸断は事業の継続を揺るがす死活問題です。 「大地震が発生した。被災地のどのサプライヤーに影響が出ているのか?」 この問いに、数時間、あるいは数日かけてExcelのリストと格闘していては、手遅れになりかねません。 今回は、大手建設機械メーカーであるコマツのサプライチェーンを災害から守るために、クオリカ株式会社が SuperMap iServer を中核として構築した、先進的なBCP(事業継続計画)対応システムをご紹介します。 従来の課題:地図なきサプライヤー管理 多くの企業では従来、サプライヤーの情報をExcelなどで個別に管理していました。これでは、各サプライヤーの「情報」はあっても、「場所」との結びつきが弱く、いざという時に迅速な判断ができません。 災害発生時に、「被災地にある企業」を瞬時に把握することができず、影響の全体像を掴むまでに大きなタイムラグが発生するという課題を抱えていました。 GISによる解決策:サプライチェーンの可視化 この課題を解決するために構築されたのが、サプライヤー情報を地図上で一元管理するシステムです。 SuperMap iServerをプラットフォームの中核とし、これまでバラバラだったサプライヤーの情報をデータベースに集約。それぞれの所在地を地図上にプロットすることで、 サプライチェーン全体を視覚的に把握 できるようにしました。 これにより、災害発生時には、地図上で被災エリアをクリックするだけで、影響を受ける可能性のある企業を瞬時にリストアップし、代替調達などの次のアクションに素早く移行することが可能になります。数時間かかっていた作業が、わずか数秒で完了するのです。 緊急時だけではない、平常時にも生きるシステム このシステムの優れた点は、緊急時だけに価値を発揮するのではない、というところにあります。 このプラットフォームは、サプライヤーとの日常的な コミュニケーションツール としても活用されています。常に最新の情報をシステム上で共有することで、いざという時のためのBCP情報が陳腐化するのを防ぎ、平常時の業務効率の向上にも貢献しているのです。 まとめ...

「事前復興」と「BCP」の違い、説明できますか?災害に備える2つの視点

この横浜の朝も、多くの企業や自治体で、いつか起こるかもしれない災害への備えが進められています。その中でよく耳にする「事前復興」と「BCP(事業継続計画)」。どちらも災害前に準備する大切な計画ですが、その目的や視点が大きく異なることをご存知でしょうか。 一言でいうと、   事前復興: 行政や地域が主体となり、「より良い街」に生まれ変わるための準備   BCP: 企業が主体となり、「自社」が生き残り事業を続けるための準備 です。今回は、あなたの会社と街を守るこの2つの計画について、その違いを分かりやすく解説します。 「事前復興」とは? – “街”の視点で考える未来のまちづくり 事前復興の主体は、市区町村などの行政と、そこに住む住民や事業者です。 これは、単に災害の被害を減らす「防災・減災」の考え方から一歩進んで、万が一壊滅的な被害を受けたとしても、「どのような街に復興させたいか」という未来のビジョンをあらかじめ共有し、その実現に向けた手順やルールを決めておく取り組みです。 事前復興で考えることの例  * もし津波で広範囲が浸水したら、次はどこに住宅地を作り、どこを産業地区にするか?  * 大規模火災を防ぐため、復興の際にはどのような道路網や公園を整備するか?  * 仮設住宅はどこに、どのくらいの規模で建設するか?  * 復興の担い手となる地元企業や住民と、どのような合意形成プロセスを踏むか? このように、事前復興は「暮らしの場」である地域全体を対象に、より安全で魅力的なコミュニティへと再生するための、長期的で大きな視点に立った計画なのです。 「BCP」とは? – “会社”の視点で考える事業のサバイバル術 BCP(Business Continuity Plan)の主体は、民間企業や病院、各種団体など、個別の組織です。 これは、災害などの緊急事態で経営資源が限られても、「絶対に止めてはならない中核事業」を特定し、それを継続または早期復旧させるための具体的な手順を定めた計画です。 BCPで考えることの例  * 本社が被災した場合、どの拠点を代替オフィスにするか?  * 部品の供給が止まった場合、どのサプライヤーから代替調達するか?  * 従業員の安否をどう確認し、誰が指揮を執るか? ...