サプライチェーンの「見えないリスク」を可視化する。GISが可能にした次世代BCPとは
ここ東京のオフィスにいても、遠く離れた地域で発生した災害が、私たちのビジネスに深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、国内外に数千、数万社のサプライヤーを抱える製造業にとって、サプライチェーンの寸断は事業の継続を揺るがす死活問題です。
「大地震が発生した。被災地のどのサプライヤーに影響が出ているのか?」
この問いに、数時間、あるいは数日かけてExcelのリストと格闘していては、手遅れになりかねません。
今回は、大手建設機械メーカーであるコマツのサプライチェーンを災害から守るために、クオリカ株式会社がSuperMap iServerを中核として構築した、先進的なBCP(事業継続計画)対応システムをご紹介します。
従来の課題:地図なきサプライヤー管理
多くの企業では従来、サプライヤーの情報をExcelなどで個別に管理していました。これでは、各サプライヤーの「情報」はあっても、「場所」との結びつきが弱く、いざという時に迅速な判断ができません。
災害発生時に、「被災地にある企業」を瞬時に把握することができず、影響の全体像を掴むまでに大きなタイムラグが発生するという課題を抱えていました。
GISによる解決策:サプライチェーンの可視化
この課題を解決するために構築されたのが、サプライヤー情報を地図上で一元管理するシステムです。
SuperMap iServerをプラットフォームの中核とし、これまでバラバラだったサプライヤーの情報をデータベースに集約。それぞれの所在地を地図上にプロットすることで、サプライチェーン全体を視覚的に把握できるようにしました。
これにより、災害発生時には、地図上で被災エリアをクリックするだけで、影響を受ける可能性のある企業を瞬時にリストアップし、代替調達などの次のアクションに素早く移行することが可能になります。数時間かかっていた作業が、わずか数秒で完了するのです。
緊急時だけではない、平常時にも生きるシステム
このシステムの優れた点は、緊急時だけに価値を発揮するのではない、というところにあります。
このプラットフォームは、サプライヤーとの日常的なコミュニケーションツールとしても活用されています。常に最新の情報をシステム上で共有することで、いざという時のためのBCP情報が陳腐化するのを防ぎ、平常時の業務効率の向上にも貢献しているのです。
まとめ
GISを活用したサプライチェーン管理は、災害という「もしも」の時に迅速な意思決定を可能にするだけでなく、平常時の業務をも効率化する、まさに一石二鳥のソリューションです。
クオリカ社によるこの事例は、地理空間情報、つまり「どこに何があるか」という視点が、企業のレジリエンスを高める上でいかに重要であるかを、明確に示しています。
コメント
コメントを投稿