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防災の日をGISで考える

 9月1日は「防災の日」。1923年の関東大震災をきっかけに制定されたこの日は、災害の記憶を忘れず備えを見直す大切な日として位置づけられています。地震・台風・豪雨・洪水…私たちの暮らす日本は自然災害と常に隣り合わせ。だからこそ、「防災の日」を単なるカレンダーの一日としてではなく、自分や地域を守る行動につなげることが重要です。 ここで欠かせないのが GIS(地理情報システム) の活用です。 GISは、地図に様々な情報を重ねて「見える化」する技術です。たとえば、避難所の位置、河川の氾濫想定区域、過去の地震分布、人口分布や高齢者世帯の割合といった社会データ…。これらをGIS上で組み合わせることで、「どこにリスクが集中しているのか」「どこに支援が必要なのか」を一目で把握することができます。また、ボランティア活動をされる方達に対して、支援の手を適正に把握し協力してもらうこともとても重要です。 従来、防災といえば“ハザードマップを確認する”といった静的なものが中心でした。しかしGISを使えば、リアルタイムの気象データや人の流れの可視化も可能になり、災害発生時に「いま」「どこで」「何が起きているか」を素早く判断できます。自治体の防災担当者にとっては意思決定の精度を高め、市民にとっては「自分ごと」として理解しやすくなる仕組みです。 防災の日に考えたいのは、単に非常食を備えるだけではなく、地域全体で命を守るために 情報をどう共有し、どう活かすか という視点。その中心にGISは大きな価値を発揮します。 今年の防災の日、防災グッズの準備と合わせて、ぜひ一度「自分の住む場所をGISで見てみる」ところから始めてみませんか?地図上に現れる現実は、避難行動や身の安全を守るツールとして、きっと防災をより身近に感じさせてくれるはずです。

橋や道路の“見えない危険”をどう防ぐ?──点検結果から考えるGIS活用

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今年の点検結果から見えたもの 昨日(8月25日)、国土交通省が2024年度(令和6年度)の橋梁などの点検結果を発表しました。 国土交通省 報道発表資料(2025年8月25日) 今回の「道路メンテナンス年報」では、全国の橋梁・トンネル・道路附属物などを対象にした3巡目の点検状況がまとめられています。 ポイントをざっと挙げると、 橋梁:18%、トンネル:17%、道路附属物:18%が点検済み。順調に進捗。 修繕が必要な橋梁(判定区分Ⅲ・Ⅳ)は 約5.3万橋 、トンネルは 約3,100箇所 。 特に問題なのが、 地方公共団体の修繕着手率の低さ 。国交省や高速道路会社に比べて遅れが目立ち、次回点検(5年以内)までに措置が終わらないリスクが指摘されています。 つまり「壊れそうな施設が分かっているのに、直せていない」──これが大きな課題なのです。 注目を集めた“空洞調査” マスメディアで大きく報じられたのは「路面下空洞調査」でした。 2024年度に国交省が調査した延長は 3,079km(全体の約15%) 。その結果、 4,739箇所で空洞が確認され、うち119箇所は陥没リスクが高いと判定 。これらはすでに修繕に着手済みです(完了は118箇所)。 1月に埼玉県八潮市で道路が陥没する事故があったこともあり、どうしても「空洞=不安」という図式が注目を集めます。ただし、国交省は詳細な場所を公表していません。住民に過度の不安を与えないためという配慮でしょうが、「じゃあ自分の町は大丈夫なの?」と感じる人も少なくないはずです。 本当の課題は“修繕の遅れ” 空洞調査よりも深刻なのは、 地方公共団体の修繕の遅れ です。 例えば2019年度点検で「早期に修繕が必要」とされた橋梁のうち、5年以上経っても未着手のものが約2割残っているというデータも示されています。 財源不足、人員不足、情報整理の煩雑さ……さまざまな理由はありますが、結局「危ないと分かっているのに手がつけられていない」という状態が各地で続いているのです。 GISで“見える化”すれば変わる ここで力を発揮するのが GIS(地理情報システム) です。 点検結果の地図化  修繕が必要な橋や道路を地図上に表示すれば、「どこが危険か」「どの自治体が抱えている課題か」がひと目で分かります。 優先順位の見える化 ...

「作っただけ」で終わらせない!自治体の防災GISを本当に役立たせる5つの処方箋

あなたの街にも「防災GIS」はありますか?多くの自治体が導入しているこのシステムですが、「いざという時に本当に使えるのか」「担当者しか使えない宝の持ち腐れになっているのでは?」という声も少なくありません。 高機能な防災GISも、使われなければ意味がありません。今回は、自治体の防災GISを、単なる地図システムから市民の命と暮らしを守る「生きたツール」に変えるための、具体的な5つの処方箋を提案します。 処方箋1:目的を「ひとつ」に絞り込む 防災GISは多機能ですが、だからこそ目的が曖昧になりがちです。まず、「誰の、どんな課題を解決するのか」という目的を一つ、徹底的に絞り込みましょう。 例1:住民向けの情報提供に特化する 「私の家は安全?」「一番近い避難所はどこ?」という住民の問いに、スマホで10秒以内に答えられるマップを目指します。ハザード情報と避難所開設状況だけを、極限までシンプルに見せることに集中します。 例2:災害対策本部の意思決定支援に特化する 被害情報が錯綜し、人や物資をどこへ送るべきか判断できない、という課題を解決します。通報や市民からの被害報告を一つの地図に集約し、被害の集中エリアと対応可能な部隊を可視化することに集中します。 「あれもこれも」ではなく、最も重要な課題解決に特化することで、システムの役割が明確になり、利用者も迷わず使えるようになります。 処方箋2:「普段使い」でシステムを鍛える 災害時にしか使わないツールは、いざという時に絶対に機能しません。平時に使われないツールは、災害時にはただの置物です。 日常業務での活用 道路の陥没箇所管理、公園の樹木管理、不法投棄場所のパトロールなど、地図を使うあらゆる業務で防災GISを「普段使い」します。これにより、職員は操作に慣れ、データも常に最新の状態に保たれます。 訓練での徹底活用 防災訓練のシナリオにGISの活用を必ず組み込みます。「地図上で被害状況を入力し、対策本部と共有する」「GISの情報を基に、避難広報車をどこへ向かわせるか判断する」といった実践的な訓練を繰り返すことが重要です。 処方箋3:データの「入口」と「鮮度」を設計する GISの価値はデータの質、特に「鮮度」で決まります。静的なハザードマップだけでなく、リアルタイムに変化する状況を取り込む仕組みが必要です。 鮮度を保つ仕組み 電力・ガス・水道...