「事前復興」と「BCP」の違い、説明できますか?災害に備える2つの視点

この横浜の朝も、多くの企業や自治体で、いつか起こるかもしれない災害への備えが進められています。その中でよく耳にする「事前復興」と「BCP(事業継続計画)」。どちらも災害前に準備する大切な計画ですが、その目的や視点が大きく異なることをご存知でしょうか。
一言でいうと、
 事前復興:行政や地域が主体となり、「より良い街」に生まれ変わるための準備
 BCP:企業が主体となり、「自社」が生き残り事業を続けるための準備
です。今回は、あなたの会社と街を守るこの2つの計画について、その違いを分かりやすく解説します。
「事前復興」とは? – “街”の視点で考える未来のまちづくり
事前復興の主体は、市区町村などの行政と、そこに住む住民や事業者です。
これは、単に災害の被害を減らす「防災・減災」の考え方から一歩進んで、万が一壊滅的な被害を受けたとしても、「どのような街に復興させたいか」という未来のビジョンをあらかじめ共有し、その実現に向けた手順やルールを決めておく取り組みです。
事前復興で考えることの例
 * もし津波で広範囲が浸水したら、次はどこに住宅地を作り、どこを産業地区にするか?
 * 大規模火災を防ぐため、復興の際にはどのような道路網や公園を整備するか?
 * 仮設住宅はどこに、どのくらいの規模で建設するか?
 * 復興の担い手となる地元企業や住民と、どのような合意形成プロセスを踏むか?
このように、事前復興は「暮らしの場」である地域全体を対象に、より安全で魅力的なコミュニティへと再生するための、長期的で大きな視点に立った計画なのです。
「BCP」とは? – “会社”の視点で考える事業のサバイバル術
BCP(Business Continuity Plan)の主体は、民間企業や病院、各種団体など、個別の組織です。
これは、災害などの緊急事態で経営資源が限られても、「絶対に止めてはならない中核事業」を特定し、それを継続または早期復旧させるための具体的な手順を定めた計画です。
BCPで考えることの例
 * 本社が被災した場合、どの拠点を代替オフィスにするか?
 * 部品の供給が止まった場合、どのサプライヤーから代替調達するか?
 * 従業員の安否をどう確認し、誰が指揮を執るか?
 * 重要なデータはどのようにバックアップし、復旧させるか?
BCPは「働く場」である自社組織を対象に、どうやって倒産や事業縮小を回避し、従業員や顧客、取引先を守るかという、現実的で短期的な視点に立った計画と言えます。
違いのポイントと大切な「連携」
改めてポイントを整理すると、事前復興は「行政・地域」が主体となり「復興まちづくり」を目指すのに対し、BCPは「企業・組織」が主体となり「事業の継続」を目指す、という点が大きな違いです。
しかし、この二つは全く別物というわけではなく、密接に連携しています。地域にある企業がしっかりとしたBCPを持つことで、街の経済が早期に回復し、事前復興計画もスムーズに進みます。逆に、行政が事前復興としてインフラの強靭化を進めていれば、企業のBCPも実行しやすくなります。
まとめ
「事前復興」と「BCP」は、社会全体を災害に強くするための、まさに車の両輪です。一つは私たちの「暮らしの場」を守り、もう一つは「働く場」を守ります。この二つの計画がそれぞれしっかりと機能し、連携することで、私たちは初めて真に災害に強い社会を築いていくことができるのです。

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