こんにちは!GIS導入支援コンサルタントのippuku_timeです。
「5分で分かるSuperMap iDesktopX製品・機能紹介シリーズ」、第12回をお届けします。前回は道路網を対象とした「交通ネットワーク解析」を学びましたが、今回はもう一つの重要なネットワーク、「施設ネットワーク解析」に焦点を当てます。水道、ガス、電力、河川など、流れの「方向」が重要なライフラインをGISでどのように分析できるのか、その強力な機能を見ていきましょう。
【第12回】ライフラインを可視化・分析!iDesktopXの施設ネットワーク解析
1. 施設ネットワークとは?
施設ネットワークとは、水道管、ガス管、送電網、河川網のように、資源や物質が決まった方向に流れるネットワークのことです。道路のように自由に行き来できる交通ネットワークとは異なり、「上流」から「下流へ」といった流向が定義されているのが最大の特徴です。
iDesktopXの施設ネットワーク解析は、この「流向」を考慮することで、インフラ管理や防災計画において極めて重要な分析を可能にします。
図 港区の地下に張り巡らされた水道管ネットワークの解析イメージ
2. 流れを追跡する「トレース分析」
トレース分析は、ネットワーク上の任意の地点から、流れに沿って(または逆らって)経路を追跡する機能です。インフラの維持管理や緊急時対応に不可欠です。
(1) 下流トレース (Downstream Trace)
指定した地点から、水や電気が流れていく先(下流)の全範囲を特定します。
① 利用シーン: 港区の古川で水質汚染が確認された場合、その汚染が下流のどの範囲まで影響を及ぼす可能性があるかを迅速にシミュレートする。
(2) 上流トレース (Upstream Trace)
指定した地点に、どこから水や電気が流れてきているか(上流)を遡って特定します。
① 利用シーン: あるビルで断水が発生した場合、そのビルに水を供給している上流の水道管系統をすべて特定し、原因調査の範囲を絞り込む。
(3) 水源・終点の検索
ネットワークの最も上流にある供給源(水源)や、最も下流にある末端(終点)を検索します。
3. ネットワークの接続状態を知る「到達可能性分析」
ネットワークが正常に接続されているか、あるいはどこが孤立しているかを分析します。
(1) 連結成分の検索 (Find Connected Features)
指定した地点と物理的に繋がっているネットワークの全範囲を特定します。
① 利用シーン: 大規模な水道管ネットワークの中で、特定の浄水場から供給されているエリア全体を把握する。
(2) 非連結部分の検索 (Find Disconnected Features)
逆に、指定した地点とは接続されていない、孤立したネットワーク部分を特定します。
① 利用シーン: 設計ミスやデータの入力漏れにより、本管と接続されていない末端の水道管を発見する。
4. ネットワークの弱点を発見する「重要フィーチャ分析」
ネットワーク全体の機能維持にとって、特に重要な部分(クリティカルな箇所)を特定する分析です。
(1) 重要フィーチャ分析 (Critical Feature Analysis)
2つの地点間の接続を維持するために、必ず通過しなければならない単一の管路やバルブなどを特定します。
① 利用シーン: 港区の防災計画において、避難所と水源を結ぶ水道管のうち、破損すると代替経路がなく、給水が完全に停止してしまう「最重要管路」を特定し、優先的な耐震化計画を立てる。
(2) パイプ破断分析 (Pipe Burst Analysis)
ネットワーク上の任意の地点でパイプが破裂したと仮定し、被害を食い止めるために閉鎖すべき最も近い上流のバルブを自動的に検索します。これは、トレース分析と最寄り施設検索を組み合わせた、より実践的な機能です。
まとめ
今回は、流れの方向性を持つ「施設ネットワーク」の解析機能についてご紹介しました。トレース分析による原因追跡や影響範囲の予測、そして重要フィーチャ分析によるネットワークの脆弱性評価など、これらの機能は、私たちの生活を支えるライフラインの安定的かつ効率的な管理に欠かせないツールです。iDesktopXを使えば、複雑なインフラ網を可視化し、高度なシミュレーションを簡単に行うことができます。
次回は、いよいよビッグデータの世界へ!**第13回「テラバイト級データに挑む!ビッグデータオンライン分析」**です。膨大な量のデータを扱うための専用機能について解説します。お楽しみに!
付録:サンプルコード(Python)
iDesktopXのPython IDEを使い、施設ネットワーク解析の基本的な機能である「上流トレース分析」を実行するサンプルコードです。
Python
# -*- coding: utf-8 -*-
from PySuperMap import *
from PySuperMap.Analyst import *
def facility_network_analysis_sample():
"""
港区の仮想水道管ネットワークで上流トレース分析を実行するサンプル
"""
try:
# ワークスペースとデータソースを取得
workspace = Workspace()
datasource = workspace.get_datasource("Minato_Data")
if datasource is None: return
# 施設ネットワークデータセットを取得
network_dataset = datasource.get_dataset("Water_Pipes_Minato")
if network_dataset is None or network_dataset.get_type() != DatasetType.NETWORK:
print("施設ネットワークデータセット 'Water_Pipes_Minato' が見つかりません。")
return
print("上流トレース分析を開始します...")
# 1. 施設ネットワーク解析アナリストを作成
# この解析ではコストフィールドは通常不要
analyst = FacilityAnalyst(network_dataset)
# 2. トレース分析のパラメータを設定
trace_param = FacilityTraceParameter()
# トレースの開始点を設定 (例としてノードID=123のバルブから)
start_node_ids = [123]
trace_param.set_source_node_ids(start_node_ids)
# 3. 上流トレース分析を実行
result = analyst.trace_upstream(trace_param)
if result is not None and result.get_edge_count() > 0:
print("上流トレースに成功しました!")
# 4. 結果(トレースされたアークIDとノードID)を取得して表示
traced_edge_ids = result.get_edge_ids()
traced_node_ids = result.get_node_ids()
print(f"トレースされたアーク(管路)の数: {len(traced_edge_ids)}")
print(f"トレースされたノード(接続点)の数: {len(traced_node_ids)}")
# 5. 結果を新しいデータセットとして保存 (オプション)
result_dataset_name = "Upstream_Trace_Result"
if datasource.get_datasets().is_exist(result_dataset_name):
datasource.get_datasets().delete(result_dataset_name)
# IDに基づいて元のネットワークからジオメトリを抽出し、新しいデータセットを作成
# (この部分はより複雑なコードが必要なため、ここでは概念のみ示します)
# GeoAnalysis.select_by_ids(network_dataset, traced_edge_ids, result_dataset_name)
print(f"結果のIDリストが取得されました。これを用いて新しいデータセットを作成できます。")
else:
print("トレース結果が見つかりませんでした。")
except Exception as e:
print(f"エラーが発生しました: {e}")
finally:
if 'analyst' in locals() and analyst is not None:
analyst.dispose()
if 'result' in locals() and result is not None:
result.dispose()
if __name__ == '__main__':
facility_network_analysis_sample()
コメント
コメントを投稿