こんにちは!GIS導入支援コンサルタントのippuku_timeです。
「5分で分かるSuperMap iDesktopX製品・機能紹介シリーズ」、第14回です。前回はテラバイト級のデータを扱う「ビッグデータオンライン分析」という壮大なテーマでしたね。今回は、うってかわって私たちの普段の生活に欠かせない、Web地図の裏側を支える「地図タイル」の技術に焦点を当てます。なぜスマートフォンやPCで見る地図は、あれほど高速に、そして滑らかに表示されるのでしょうか。その秘密を解き明かしていきましょう。
【第14回】Web地図の高速表示を支える「地図タイル」の技術を徹底解説
1. 地図タイルとは?
地図タイルとは、巨大な一枚のデジタル地図を、あらかじめ多数の小さな正方形の画像(タイル)に分割して保存しておく技術です。私たちがWeb地図を閲覧する際、画面に表示されている範囲に必要なタイルだけをサーバーから読み込んで、パズルのように組み合わせて表示しています。これにより、巨大な地図データを一度に読み込む必要がなくなり、驚異的な表示速度が実現されています。
(1) 地図タイルのピラミッド構造
さらに、地図タイルはズームレベルごとに用意されています。地図を縮小しているときは解像度の低い(少ない枚数の)タイルを、拡大するにつれて解像度の高い(より多くの枚数の)タイルを読み込むように、階層的な構造(ピラミッド)になっています。これが、滑らかなズーム操作を可能にしているのです。
図14-1 地図タイルのピラミッド構造の概念図
図14-2 地図タイル技術のイメージ
2. iDesktopXでのタイル作成プロセス
iDesktopXは、この地図タイルを作成し、管理するための包括的なツールを提供しています。作成できるタイルには、主に2つの種類があります。
(1) ラスタタイル
従来からある、地図をPNGやJPG形式の「画像」として分割したタイルです。表示が非常に高速である一方、拡大しすぎると画像がぼやけたり、地図のデザイン(配色やシンボル)を後から変更できないという特徴があります。
(2) ベクトルタイル
よりモダンで柔軟な形式です。タイルの中身が画像ではなく、点・線・ポリゴンといった「ベクタデータ」そのものになっています。
① メリット: データ量が圧倒的に小さく、配信が高速です。また、クライアント側(ブラウザやアプリ)で地図を描画するため、拡大しても常にシャープな表示が保たれ、地図のスタイルを動的に変更することも可能です(例えば、夜間モードの地図に切り替えるなど)。
3. 効率的なタイル作成:マルチプロセス処理
日本全国のような広大なエリアに対して、詳細なズームレベルまで地図タイルを作成する作業は、非常に時間がかかります。iDesktopXは、この課題を解決するために「マルチプロセス処理」機能を搭載しています。
これは、膨大なタイル作成タスクを多数の小さなサブタスクに分割し、PCのCPUコアを最大限に活用して複数のタスクを同時に並行処理する技術です。これにより、タイル作成にかかる時間を劇的に短縮することができます。
4. タイルの管理と公開
タイルは一度作成して終わりではありません。元のデータが更新されれば、タイルも更新する必要があります。
(1) タイルの更新とチェック
iDesktopXには、地図データが変更されたエリアのタイルだけを効率的に更新する機能や、タイルが正しく生成されているか(欠けているタイルや、白紙のタイルがないか)をチェックする管理ツールが備わっています。
(2) iServerへの公開
作成した地図タイルは、最終的にSuperMap iServerなどの地図サーバーを通じてWebサービスとして公開します。これにより、作成したタイルがWebサイトやモバイルアプリからアクセス可能になり、多くのユーザーに高速な地図を提供できるようになります。
まとめ
今回は、普段何気なく利用しているWeb地図の高速表示を支える「地図タイル」技術について、その仕組みからiDesktopXでの作成・管理方法までを解説しました。ラスタタイルとベクトルタイルの違いを理解し、マルチプロセス処理のような効率化機能を活用することで、プロフェッショナルなWeb地図配信基盤を構築することができます。
次回は、**第15回「図面としての地図作り!レイアウト・組版・印刷」**です。分析や可視化のためだけでなく、報告書やプレゼンテーションで使うための、体裁の整った「印刷用地図」の作成方法について詳しく見ていきます。お楽しみに!
付録:サンプルコード(Python)
iDesktopXのPython IDEを使い、指定した地図から地図タイル(ベクトルタイル)を生成する処理を自動化するサンプルコードです。
Python
# -*- coding: utf-8 -*-
from PySuperMap import *
from PySuperMap.Mapping import *
def generate_map_tiles_sample():
"""
指定した地図から地図タイルを生成する処理を自動化するサンプル
"""
try:
# ワークスペースと地図を取得
workspace = Workspace()
map_name = "Minato_Map" # タイル化したい地図の名前
if not workspace.get_maps().is_exist(map_name):
print(f"地図 '{map_name}' が見つかりません。")
return
print(f"地図 '{map_name}' のタイル生成を開始します...")
# 1. タイル生成パラメータを設定
parameter = MapToTilesParameter()
parameter.set_map_name(map_name)
# タイルタイプをベクトルタイルに設定
parameter.set_tile_type(TileType.VECTOR)
# 保存形式を「オリジナル」(フォルダ階層)に設定
parameter.set_storage_type(StorageType.ORIGINAL)
# 出力パスとタイル名を設定
# パスはご自身の環境に合わせて変更してください
output_path = r"D:\gis_data\map_tiles"
tile_name = "Minato_Vector_Tiles"
parameter.set_output_path(output_path)
parameter.set_tile_name(tile_name)
# 生成する縮尺レベルを設定 (例: 1:288895 から 1:9028)
scales = [
1.0 / 288895.0,
1.0 / 144448.0,
1.0 / 72224.0,
1.0 / 36112.0,
1.0 / 18056.0,
1.0 / 9028.0
]
parameter.set_scales(scales)
# 2. タイル生成タスクを作成
# MapToTilesは静的クラス
task_id = MapToTiles.create(workspace, parameter)
if task_id:
print(f"タイル生成タスクが作成されました。ID: {task_id}")
# タスクの実行と進捗監視
task_runner = TaskRunner.get_instance()
task_runner.start(task_id)
while True:
status = task_runner.get_task_status(task_id)
if status.get_state() == TaskState.FINISHED:
print("タイル生成が正常に完了しました。")
break
elif status.get_state() == TaskState.FAILED:
print("タイル生成に失敗しました。")
break
print(f"進捗: {status.get_progress()}%")
# 実際のアプリケーションでは、ここで適切な待機処理を入れます
import time
time.sleep(5)
else:
print("タイル生成タスクの作成に失敗しました。")
except Exception as e:
print(f"エラーが発生しました: {e}")
if __name__ == '__main__':
generate_map_tiles_sample()
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