【第18回】2Dから3Dの世界へ!iDesktopXの3Dビジュアライゼーション入門

こんにちは!GIS導入支援コンサルタントのippuku_timeです。

「5分で分かるSuperMap iDesktopX製品・機能紹介シリーズ」、第18回です。前回は、GISの定型業務を自動化する「プロセスオートメーション」について学びました。今回は、iDesktopXのもう一つの大きな柱である「3Dビジュアライゼーション」の世界に飛び込みます。平坦な地図から、リアルな3D都市空間へ。データが持つもう一つの次元を可視化する機能を見ていきましょう。


【第18回】2Dから3Dの世界へ!iDesktopXの3Dビジュアライゼーション入門


1. 3Dシーンとは?

iDesktopXにおける3Dの作業空間を「シーン」と呼びます。2Dが「地図」であるのに対し、3Dでは「シーン」が基本となります。このシーンには、地球全体を模した「球面シーン」と、特定のエリアを平面として扱う「平面シーン」の2種類があり、目的に応じて使い分けることができます。

図 iDesktopXで構築された東京都港区のリアルな3Dシーンのイメージ


2. 3Dシーンへのデータ読み込み

3Dシーンには、2Dデータ(建物ポリゴン、道路ラインなど)と3Dデータ(BIMモデル、点群など)の両方を読み込むことができます。

(1) 2Dデータの3D表示:

2Dのベクトルデータを読み込むと、それらは地球の曲面に沿って地表面に貼り付けられます。

(2) 3Dキャッシュデータの活用:

高精細な地形データや、広範囲の3Dモデルを快適に表示するために、iDesktopXでは各種データを専用の「3Dキャッシュ」形式に変換して利用します。

① 地形キャッシュ(*.sct): DEMなどの標高データをキャッシュ化し、起伏のあるリアルな地形を再現します。

② モデルキャッシュ(*.scp): Project PLATEAUなどで提供される3D都市モデル(傾斜写真測量モデルやBIMモデル)をキャッシュ化し、高速に表示します。


3. 2Dデータから3Dモデルを瞬時に作成「クイックモデリング」

iDesktopXの3D機能で最も強力かつ直感的な機能の一つが「クイックモデリング」です。これは、2Dのポリゴンデータが持つ属性値(例:建物の階数や高さ)を利用して、一括で3Dモデルを立ち上げる機能です。

(1) 利用シーン:

東京都港区の建物ポリゴンデータ(PLATEAUから入手可能)には、建物の高さ情報が含まれています。この「高さ」フィールドを「立ち上げ高」として指定するだけで、港区全体の建物が一斉に3Dモデルとして立ち上がり、瞬時にデジタルツインのような都市景観を構築できます。


4. リアルなシーンを演出する多彩な表現機能

(1) 3Dシンボル:

2Dと同様に、3D空間でも多彩なシンボルが利用できます。例えば、道路のラインに「ガードレール」の3Dシンボルを適用したり、公園のポイントにリアルな樹木の3Dモデルを配置したりすることができます。

(2) パーティクルエフェクト:

噴水、炎、煙、雨、雪といった、動きのある自然現象や特殊効果を「パーティクル」としてシーンに追加できます。これにより、よりリアルで没入感のある3D空間を演出できます。

(3) 太陽光と影:

日付と時刻を設定することで、その時点での太陽の位置をシミュレートし、建物や地形が落とすリアルな影を再現できます。これは、建築計画における日照シミュレーションなどに不可欠な機能です。

(4) 地下モードとウォークモード:

① 地下モード: 地下鉄や地下街、ライフライン(水道・ガス管)など、地表下にあるオブジェクトを可視化するためのモードです。地表を半透明にしたり、掘削したように見せることができます。

② ウォークモード: シーンの中を、まるで歩いているかのような一人称視点で自由に移動できます。都市空間のシミュレーションや、ゲームのようなインタラクティブな体験が可能です。


5. 3Dプレゼンテーション機能

iDesktopXには、作成した3Dシーンを活用して、PowerPointのようなプレゼンテーションを作成する機能が搭載されています。

各スライドに異なるカメラアングルや表示レイヤーを設定し、スライド間を滑らかなカメラワークで移動することができます。これにより、都市計画のプレゼンテーションや、プロジェクトの進捗報告などを、静的なスライドではなく、ダイナミックでインタラクティブな3D空間で行うことができます。


まとめ

今回は、iDesktopXが提供する「3Dビジュアライゼーション」機能の入り口をご紹介しました。2Dの地図データを3Dに立ち上げるクイックモデリングから、リアルな環境を再現する各種エフェクト、さらには没入感のある閲覧モードまで、iDesktopXを使えば誰でも簡単にパワフルな3D GISの世界を体験できます。これは、都市計画、防災、環境シミュレーション、不動産など、あらゆる分野で地理空間情報の活用を新たなレベルへと引き上げます。

次回は、**第19回「3Dモデルを自在に操る!3D地理シーンの構築と編集」**です。3Dモデルをさらに詳細に作成・編集するための高度な機能について解説します。お楽しみに!


付録:サンプルコード(Python)

iDesktopXのPython IDEを使い、2Dの建物ポリゴンレイヤーに対して、高さ情報("height"フィールド)を使って3Dに立ち上げる(押し出す)スタイルを設定するサンプルコードです。

Python


# -*- coding: utf-8 -*-

from PySuperMap import *
from PySuperMap.Realspace import *

def extrude_buildings_in_3d():
    """
    2Dの建物レイヤーを3Dシーンで立ち上げるスタイルを設定するサンプル
    """
    try:
        # ワークスペースとアクティブなシーンを取得
        workspace = Workspace()
        scene_control = workspace.get_active_scene_control()
        if scene_control is None:
            print("アクティブなシーンがありません。")
            return
        scene = scene_control.get_scene()

        # スタイルを設定したいレイヤーを取得 (ここでは "Buildings_Minato" ポリゴンレイヤーを想定)
        layer_name = "Buildings_Minato"
        layer = scene.get_layers().get_item(layer_name)
        if layer is None or layer.get_type() != Layer3DType.REGION:
            print(f"3Dシーン内のポリゴンレイヤー '{layer_name}' が見つかりません。")
            return

        print(f"レイヤー '{layer_name}' の3Dスタイルを設定します...")

        # 1. 3Dレイヤーのスタイルを取得
        style = layer.get_style3d()
       
        # 2. 押し出し(Extrude)設定
        # 押し出しの高さを属性フィールド "height" に基づいて設定
        style.set_extrude_expression("height")
       
        # 押し出しの基準高度モード (地面からの相対高度)
        style.set_altitude_mode(AltitudeMode.RELATIVE_TO_GROUND)
       
        # 3. 建物の壁(側面)の色を設定
        fill_style = GeoStyle3D()
        fill_symbol = FillSymbol3D()
        fill_symbol.set_fore_color(Color(200, 200, 200)) # 明るいグレー
        fill_style.set_fill_symbol(fill_symbol)
       
        style.set_fill_style(fill_style)
       
        # 4. 変更したスタイルをレイヤーに適用
        layer.set_style3d(style)
       
        # 5. シーンをリフレッシュして変更を反映
        scene.refresh()
        print("建物の3D立ち上げスタイルが適用されました。")

    except Exception as e:
        print(f"エラーが発生しました: {e}")

if __name__ == '__main__':
    extrude_buildings_in_3d()

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