技術の潮流と人の絆が生み出す、国土情報の新たな地平

 はじめに

「SuperMap」「海図」「陸海空一体化」──先日、これらのキーワードで未来の国土情報の姿を思い描く機会がありました。さらに、毎年恒例となっている日本の国際協力の柱「JICA海外公務員研修」を重ね合わせると、テクノロジーと人、そして国づくりが交差する壮大な物語が浮かび上がってきます。

2025年の今、地理空間情報をめぐる世界ではどんな潮流が生まれているのか。その可能性をたどりながら、「技術」と「人」の協奏が生み出す未来を探ってみたいと思います。

AIとGISが描く「陸海空一体化」の未来

かつて、地図は「陸」、海図は「海」、それぞれ独立した世界でした。しかし現代のGIS技術──特にSuperMapのような先進的なプラットフォームは、その境界を軽々と越えています。

3D都市モデルで陸の姿を描き、ドローンが撮影した高精細オルソ画像で空から俯瞰し、さらに国際標準の電子海図(S-57/S-100)で海の情報を重ね合わせる。こうした「陸・海・空」の情報を一つのデジタル空間に統合し、リアルタイムに解析できる時代が到来しました。

さらにここにAIが加わることで可能性は大きく広がります。衛星データからインフラの変化を自動検出する。過去の気象・海象データと地形データを組み合わせてリアルタイムに浸水リスクを予測する「AI Geo-relationalモデル」が現実となり、国土規模のデジタルツインが実現しつつあるのです。

災害時の被害把握、インフラの効果的な配置、洋上風力発電の立地選定など、応用分野は無限に広がっています。これはまさに「陸海空一体化」の深化にほかなりません。

JICA研修が築く“知のインフラ”

ただし、どれほど高度な技術であっても、それを活かすのは「人」です。特に防災やインフラ整備が急務の開発途上国では、技術の導入と同時に、それを担う人材育成が不可欠です。

ここで重要な役割を果たしているのが、JICAの「知識共創プログラム」としての公務員研修「JICA集団研修(水路測量技術者養成の国際認定コース)」です。各国から集まった行政官や技術者たちは、日本の国土地理院や海上保安庁海洋情報部で、測量、地図作成、水路測量といったノウハウを学びます。

単なる技術操作を学ぶだけでなく、国家空間データ基盤(NSDI)をどう構築し、運用していくかという思想や哲学に触れることこそ大きな価値です。研修を終えた彼らは、自国に戻り、防災や資源管理、インフラ計画といった現場で「陸海空一体化」の視点を実装していくリーダーとなります。そこで直面するのは、沿岸部の防災、海洋資源の管理、効率的なインフラ計画といった、まさしく「陸海空一体化」の視点が求められる課題です。

日本で培った知識と経験は、SuperMapのようなツールを活用する際の礎となり、それぞれの国の事情に合った国土情報基盤をデザインする羅針盤となっていくのです。

 結び:テクノロジーと人が織りなす未来

SuperMapが拓く技術の最前線と、JICA集団研修が紡ぐ人と人との絆。この二つが交わるとき、そこに生まれるのは単なる技術移転ではなく、持続可能な国づくりへの道筋です。

国土をデジタル空間上で統合的に可視化し、リアルタイムで課題に対応する──そんな未来は、もはや夢物語ではありません。最新のテクノロジーという「縦糸」と、国境を越えた人のつながりと知識の共有という「横糸」。その二つが織り成すタペストリーこそが、これからの時代における国土情報の新たな地平を切り拓いていくのだと強く感じています。

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