SuperMap iDesktopXでOpenStreetMap(OSM)を使い倒す:単なる背景図から、最強の分析基盤へ
ここ東京でも、GISに携わる者なら誰もが一度はお世話になったことがあるであろう「OpenStreetMap(OSM)」。世界中のボランティアによって日々更新され、無料で利用できるこの詳細な地図データは、私たちの分析や地図作成において、もはや欠かせない存在です。
多くの人はOSMを便利な「背景図」として利用していますが、そのポテンシャルはそんなものではありません。SuperMap iDesktopXの強力な機能と組み合わせることで、OSMは単なる地図から、あなたのプロジェクトの核心を担う「最強の分析基盤」へと昇華させることができるのです。
今回は、OSMをSuperMap iDesktopXで「使い倒す」ための3つのステップを考えてみます。
ステップ1:データを「取り込む」― オンラインとオフラインを使い分ける
まず、iDesktopXでOSMを利用する方法は、主に2つあります。目的に応じて使い分けることが肝心です。
① オンラインサービスとして利用する(手軽さ重視)
最も簡単な方法は、iDesktopXの「Webマップ」機能から、背景図としてOSMを直接呼び出すことです。これだけで、世界中の詳細な地図をすぐに利用でき、非常に手軽です。しかし、この方法では地図のデザインを変更したり、データそのものを分析したりすることはできません。
② 生データをダウンロードして利用する(本格活用)
OSMの真価を発揮するのが、この方法です。Geofabrikなどのサイトから、必要なエリア(例えば「関東地方」全体)の生データ(.osm.pbf形式など)をダウンロードします。iDesktopXは、このデータを直接インポートし、編集可能なベクトルデータ(建物、道路、POIなど)に変換する強力な機能を備えています。ここからが、OSMを真に「使い倒す」ためのスタートラインです。
ステップ2:データを「整える」― 日本の仕様に最適化する
OSMは世界標準のデータですが、日本の業務で使うには、一手間加えることで、その価値が飛躍的に向上します。
座標系を変換する
OSMの標準座標系はWGS84ですが、日本の多くのプロジェクトでは平面直角座標系が使われます。iDesktopXの豊富な座標系ツールを使い、ダウンロードしたデータを日本の座標系に正確に変換しましょう。
必要な情報を抽出・整理する
ダウンロードした直後のOSMデータは、あらゆる地物が混在した、いわば「情報のジャングル」です。ここから、iDesktopXのデータ編集・加工機能を駆使します。
例1:道路ネットワークの構築
道路データだけを抽出し、「一方通行」「速度制限」といった属性情報を基に、カーナビのようなルート分析が可能な「ネットワークデータセット」を構築します。
例2:POI(施設情報)のクレンジング
「コンビニ」「スーパーマーケット」といった特定のPOIだけを抽出し、日本語の名称が不揃いであれば、バッチ処理で修正・統一します。
この「整える」作業こそが、OSMを趣味の地図から、プロの仕事に耐えうる高品質なデータ基盤へと生まれ変わらせる、最も重要な工程です。
ステップ3:データを「使い倒す」― SuperMapの高度な機能と組み合わせる
綺麗に整えられたOSMデータは、SuperMap iDesktopXの高度な機能と組み合わせることで、その真価を発揮します。
3D都市モデルの基盤として
OSMから抽出した建物のポリゴンデータに、iDesktopXの3D機能で高さを与えれば、簡易的な3D都市モデルのベースを瞬時に作成できます。ここにPLATEAUのデータを組み合わせることで、さらにリッチなデジタルツインを構築できます。
AIによるオブジェクト抽出の教師データとして
OSMの正確な建物や道路データを「正解データ(教師データ)」として使い、SuperMapの地理空間AIに学習させる。これにより、衛星画像から最新の地物を自動で抽出する、独自のAIモデルを育成することができます。
商圏分析やエリアマーケティングの基盤として
OSMの道路ネットワークとPOIデータを基盤に、人流データや国勢調査といったオープンデータを重ね合わせれば、極めて低コストで、高精度な商圏分析のプラットフォームを構築できます。iDesktopXの空間統計ツールを使えば、店舗の最適な立地選定などが科学的に行えます。
まとめ
OpenStreetMapは、単なる無料の背景図ではありません。それは、私たちのアイデアとGISの技術次第で、無限の可能性を引き出せる、巨大な地理空間データの鉱脈です。
SuperMap iDesktopXは、その鉱脈から原石を掘り出し、磨き上げ、そして価値ある宝石(インテリジェンス)へと変えるための、強力なツールボックスを提供してくれます。
まずは背景図としてだけでなく、ぜひ一度その生データをダウンロードし、あなただけの「最強の分析基盤」としてOSMを「使い倒す」挑戦を始めてみてはいかがでしょうか。
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