ビル内から都市全体まで。インドア・アウトドアを繋ぐ「多階層データ」が災害対応を変える

災害時、私たちが本当に必要とする情報は、今いる場所のスケール(階層)によって大きく異なります。例えば、高層ビルの中にいれば「このフロアのどこが危険か」というミクロな情報が、屋外へ避難する際には「どの道が安全か」というマクロな情報が必要になります。

これからの都市防災システムは、こうした複数のスケールにまたがるデータを統合し、シームレスに連携させる「多階層データエコシステム」を管理する必要があります。


3つのデータスケール

  1. 建物スケール(ミクロ) ビル内の地震計から送られてくるリアルタイムの振動データや、建物の構造データ(BIM/CIM)。これにより、個々の建物のどの部分に損傷があるかを詳細に把握できます。

  2. 滞在者スケール(メゾ) スマートフォンの位置情報などを活用した人流データ分析技術。施設内のどこが混雑しているか、人々がどのように移動しているかを把握し、避難誘導やパニック防止に役立てます。

  3. 都市スケール(マクロ) 監視カメラの画像認識、携帯電話の基地局データ、SNS情報などを活用し、都市全体の被害状況を把握します。どのエリアで火災が発生しているか、どの道路が渋滞しているか、どの避難所が開設されたかといった広域の情報です。

「インドア・アウトドア シームレス」への挑戦

従来のGIS(地理情報システム)は屋外の地図情報を扱うのが得意でしたが、建物内部の詳細な情報(インドア)との連携は得意ではありませんでした。しかし、技術は進化しています。

ビルの中で被災状況を報告すると、そのミクロな情報が即座に都市全体の被害状況マップ(マクロ)に反映され、最適な避難ルートが再計算される――。そんな「インドア・アウトドア シームレス」な情報提供こそが、複雑な都市災害から人々を守る鍵となります。この技術的挑戦が、私たちの安全を次のレベルへと引き上げるのです。 

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